南座顔見世 夜の部

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「引窓」
「口上」
「本朝廿四孝」十種香・奥庭
「相生獅子」「三人形」

今年の顔見世はとにかく「坂田藤十郎襲名披露興行」。これに尽きる。
昼の部は、初代の出世作「夕霧名残の正月」を復活上演、当代最大の当たり役「曽根崎心中」のお初。夜は八重垣姫。
よくもまあこんなにやるもんよ。今日は夜だけ。順番にいこか。


「引窓」。十字兵衛は梅玉。二度目ですが、前回は初代播磨屋型。今回は上方の成駒屋型ということで微妙に違いました。ただ、この人は上方の匂いがあまりしないのでどうかな?
お早が扇雀、お幸が東蔵、濡髪が我當。無難なところでこれというのはなかったですね。


「口上」。これはもういいでしょう。とにかく道具が金ピカで金がかかってそうやなあとw
相変わらず音羽屋の口上は笑いをとりに走るし。まあそれはそれでいいと思うけど。こういうのがないと見てるほうも疲れる。


「廿四孝」。八重垣姫は藤十郎。濡衣に秀太郎、勝頼に菊五郎、謙信に吉右衛門。六郎は梅玉、小文治が仁左衛門と豪華キャスト。とにかくこのキャストの豪華さが目立った。いつもの上方オールスターズなら、勝頼が松嶋屋で、謙信は我當。六郎とか小文治なんかは進君あたりやろ。
上方のやり方で音羽屋っていうのもやっぱり違和感があるけど、まあほとんど立ってるだけだしなw
役者が役者だけに見ごたえはあるよ。
奥庭は人形振りの演出。国立で通しをやって以来6年ぶり。
実は先月に文楽劇場で廿四孝の通しを文楽でやっていたのでそれとの比較もできる。
まず、「とーざい、只今の奥、奥庭狐火の段ー。相勤めまする太夫ー、竹本葵太夫ー。」拍手。アレ? みんなしないの? こういうところで文楽と歌舞伎の温度差が感じられる。というか、みんな文楽見てないからだろうなあ。
で、文楽と同様に狐のぬいぐるみが出てきてひとしきり操った後、翫雀人形遣いで八重垣姫が出てきます。文楽で船底を足蹴して音を出しますが、そのための黒衣が下手でバンバンやってます。
はっきりいうと、藤十郎はさすがに巧い。持ち役の一つやからね。けど、脇がなあ。
翫雀はまあ必死なのは伝わってきた。けど、ここは人形に擬した藤十郎の八重垣姫が主役で、人形遣いはそれにあわせなきゃならん。そこは阿吽の呼吸でやるべきところなんやけど、動きがバラバラ。八重垣姫の右手が動いた後に遅れて動いているようでは全然ダメ。
それから黒衣なので誰かわからないが、左。これは問題外。全く動いてない。あれではタダの後見。わざわざ人形振りでやる意味がない。
両人ともせっかく先月に文楽の通しをやっていたわけだからそこで勉強してからのぞんでほしかった。そういうところが藤十郎丈との違いか。元々は、藤十郎襲名と同時に「四代目・中村鴈治郎」も襲名披露される予定だったと聞くが実現しなかったのも、さもありなん。
つうことで、十種香だけで終わっていれば最高の幕切れだったのになw


「相生獅子」「三人形」。何か役のない人たちへの救済措置に見えるなw
「相生獅子」は芝雀菊之助菊之助はきれいなんだけども色気がない。見ててもブスッとして踊ってる感じ。最低限の仕事はしてるかなというところ。
芝雀は、あれはひどいなw 獅子の精になってから頭を振るが、あんなぎこちないのはお浚い会でもなかなかお目にかかれへんわ。菊之助がスムーズに振ってるのに対して、もう必死で豪快に頭をブンブン回してる。そんなに回さなくてもなあ…。コツさえつかめばもっと巧くロスなく回せるだろうに。
「三人形」。傾城が孝太郎、若衆が愛之助、奴が松緑
実はこれが今日の一番の収穫かもしれない。
もうハナっから全然期待してなくて、適当に流すかと思ってた。
ところが。
松緑が随分と張り切ってやっているのだ。そんなに張り切ったら所作板が抜けるw
江戸の荒事を思わせる豪快で奔放な演技。活力に満ち溢れていて観ていて気持ちがいい。見物も期せずして拍手があがっていた。
期待してないのにいい意味で裏切られるといいもんやね。
ただ、松嶋屋組はイマイチ。愛之助なんかは、アレ、廓に遊びにきた若衆には全然見えない。ただ型通りにこなしてるだけ。気持ちがこもってない。
そういう意味では東京からわざわざ出張ってきた松緑の一人勝ち。
出し物としてのバランスはひどく悪いけどな。これはもうミスキャストなので仕方ない。江戸の所作事に上方役者を使う方が悪い。
所作事をやらせたら松緑も捨てたものではないなと思った。


ところで、これから夜の部へ行かれる方へアドバイス
できるだけ時間ギリギリに行きましょう。4時半回ってから。なぜならば、昼の部が終わってないからw
今日も開場してトイレ行ったらもう5分前の1ベル。極端に言えば、開演10分前に入るぐらいのつもりでどうぞ。
僕もちょっと河原町で時間をつぶしてきたが、なんと
丸善がつぶれてる!
以前、2ちゃんねるで「丸善倒産」というスレが立っていましたが、あながちデマとも言えないのでしょうか。京都であそこ以上の品揃えはなかったのになあ…。
これで梶井基次郎の「檸檬」もおしまいよ。
それにしても跡地がジャンカラとは…
サンマルクカフェとかエクセルシオールとか全国チェーンの店舗が特にここ数年激しい。新京極なんか10年前とは全く別の通りになってる。京都に魅力がないと地元で危機感をつのらせているようだが、京都にしかなかった魅力を破壊していってるからじゃないのかと思う。
このまま放置しておいたら、河原町通りなんか、どこにでもある街になって、観光に来ても何にも魅力なんか感じないつまらない街になってしまうんじゃないかな。
せめて昔からの店だけは守ってほしい。だから今日もインパルスでコーヒーを飲んできたわ。あそこはやっぱり美味いな。あまりガイドブックにも載ってないから混んでないし落ち着くよ。