仁左衛門と玉三郎@松竹座

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夜の部を観てきたよ。
●神霊矢口渡
忠臣蔵 道行、五・六段目
●春調娘七草


忠臣蔵は今さら言うこともないやろ。何回もやってるしな。やっぱりよかったよ。松嶋屋
春調〜も澤瀉屋の若手がニンに合っていてキレイに最後を締めてくれた。
今月の夜の部で一番興味深いのは「神霊矢口渡」やろうな。全員初役。初役らしく穴も多いけど努力は認めるよ。けどなあ、手負いになってからの孝太郎のお舟。必死でやってるのは分かるけど、必死になりすぎて手負いに見えへんところがあるんやなあ。とくに六蔵との立ち廻りになる場面。まあこれからよ。
ところで、「神霊矢口渡」って見方によってはものすごく皮肉やな。「ええ強欲なととさん」というお舟のセリフがあるけど、自分が惚れた男のために実の父親の手柄を台無しにするお舟も相当強欲やろw
さらに自分だけの手柄にしたがる六蔵。この三人の強欲者が争って、結局いちばん得をしたのは誰かというと新田義峯。惚れられた敵側の女を巧く騙してまんまと逃げ切ったわけやからな。で、強欲三人衆は揃って討ち死に。お舟は来世で夫婦の契りを約束されたと思い込んでるから自分の中では名誉の戦死かもしれへんけど、客観的にみて犬死やろ。
つまり、あまり自分の欲望だけにこだわりすぎると何もいいことはないよ、っていうように取ることができるんよ。一般的には一途な恋心に感動なんやろうけどな。特に「自分が、自分が」の現代においては強烈な一撃よ。アメリカ良い国強い国とイスラム原理主義、そしてそれらに打算的に協力する連中。みんなムダに国力を疲弊させたり、国土が荒れたり、いいことは一つもない。なんだかなあって思いながら観てたわ。