山中千尋「abyss」

アビス

アビス

ちょっと音楽の方向が変わってきたかなってのが第一印象。Verveに移籍してから3枚目になるけど、前の2枚が澤野工房時代の延長かつ新たな道への模索やったとすると、その道標が見つかったのかなって。
何か吹っ切れた感じを受けた。それは使用している楽器がピアノだけでなくなったこともあるけど、そういう表面的なことではなく、インパクトを感じるんよ、オレは。
澤野時代は瑞々しい跳ねるような演奏で、聴いている側にも演奏することの楽しさが伝わってきたが、それとは違い、いい意味で落ち着いた演奏。そこには経験に裏打ちされた自信や計算もあるやろうけど、自分の進むべきとこが見えてきたという気がする。
ほとんどを自作曲でやってきたけど今回は10曲中3曲しかない。作曲するのは簡単(といっても創ることは何でも難しいんやけど)でも他人の曲をアレンジして自分の解釈を加えて表現するというのは難しい。それは前に演奏した人たちと比較され、評価されるから。そこへ挑んでいったのは自分への挑戦でもあるんやろうな。
決して名盤ではないとは思うけど、ミュージシャン山中千尋(あえてピアニストとは呼ばない)としてのターニングポイントになるんとちゃうんかと。そういう意味では視聴機から即決でしたね。