今時のブルジョア学生は

仕事で駒場の東大へ行ってきた。
案件その1を済ませると次の案件までは30分ばかし猶予があったので早めの昼飯をと。先ほど教務課でもらった構内案内図を用務上の都合でながめていたところ、!!!マークが。
かつては坂下門からペニスコート沿いの坂道を昇ってくると、途中に大正浪漫溢れる木造建築物があった。世に同窓会館と呼ばれたシロモノであるが、今、そこには明らかに不釣合いな洋館が建っている。レストランが入っているというので試しに行ってみたのだが――
「ランチ 800円〜」
「なんちゃらのメダパニ風チョッチョリーノ 1,500円」
「どこのブルジョアじゃあ!」
ワシらの在りし頃、グリスパの650円のスパゲッチーを「あんなもんはブルジョアの食う物だ」と弾劾して、断固230円のカレーを食らいながら「これなら大盛にしても2食くえるわ」と吠えていたものだ。時は流れて倍率ドン、さらに倍。
ええ。食いましたよ。もちろん同行した課長の奢りで。コーヒーもつけてもらったわ。
店内は木を基調に造られていて、わずかに離れた掲示板辺りの雑然とした雰囲気とは全くの異次元空間。調度類も同系色でまとめられワイングラスなんかも並んでおり、カウンターには洋酒の瓶が整頓されている。給仕する従業員も三宿かどこぞのレストランみたいにこじゃれた制服を着こなしている。
我々が入店したのはまだお昼には早い時間だったので先客は1組だけ。学生である。
「このテニサー野郎が!」
と条件反射してしまうところが悲しい。後でよくよく見るとちゃんとラケットらしきものを持っていたので間違いではなかったのだが。
ランチといえど、サラダが出てきてパンもバターロールとかいかにも安っぽいものではなく、おフランス直輸入ザンス。パリパリしてすぐには嚥下できないところがブルジョアたる所以。噛め噛め噛むのだ。ブルジョアはゆっくりと食事しなければならない。
そしてメインディッシュ。あれ?こんだけ??
確かにランチのメインディッシュとしては普通の分量かもしれない。だが待てよ。ここは大学。質より量の世界。申し訳程度のサラダにパンが2切れと、成城石井で買ってきても300円ぐらいのシャケの切り身で800円もふんだくるつもりか。こうして資本蓄積が行われていくのだ!ナンセーンス!!
ええ。おとなしく引き下がってきましたよ。だって、課長の奢りだから。
最近の学生が金を持っているとはいえ、お昼時になっても来店するのは近所の夕刊マダムたちばかり。どうやら近隣住民への奉仕活動のようです。それでもワシが現役なら。ここの前でトラメガ持って街販するぞ、街販するぞ、徹底的に街販するぞ。