うなぎはうまいなあ

ちょっと神経系の調子がアレしたことなもんで、久しぶりに通院してみたわけだ。通院時のお楽しみといえば、当然、美味いもんを食うに限る。(わしゃ、お菓子に釣られて病院へ行く子供か。)
久しぶりに飯田橋の川勢へ。世の中では鰻と言えば夏の、それも土用の丑の日に食べるのが一番おいしいと思われているが、なんの。それは鰻の一番不味いシーズンである。一説によれば、夏場に売れない鰻を何とかして売れないものかと鰻屋が平賀源内に相談しに行ったところ。鰻には滋養強壮によい成分が含まれていることから夏バテ防止にと喧伝して売り出せばよいであろうとのこと。要するに江戸時代のバレンタイン商法なわけで。
本当の鰻の旬は、秋。鰻は冬眠するそうだ。リスや熊のように秋になれば一冬を越すだけの蓄えを備えておくため、もっとも脂が乗っておいしいというわけである。もちろん獲れたてなら晩秋なんかが一番うまかろう。しかし、そこからある程度残っている冬の鰻というのもオツなもんである。
というよりも、川勢の鰻はいつ行っても美味い。焼き方が違う。まず注文してからきっちり30分は待たされる。作りおきをしなければ、鰻の蒲焼を調理するわけだから当たり前のことで、10分もせんうちに出てくる店の方がおかしいわけである。
というのは、ワシが川勢に行くたびに書いているのでもう自重しよう。
ハナから30分待って美味いもんを食うつもりでいっているので何ら腹の立つこともない。むしろ、この30分間、黙々と読書に励めるわけだから別に1時間でも構わんのだ。
そして、ほどよいころにお重を出される。蓋をとるとタレの香りが漂ってくる。鰻の身に箸をつけると力をいれずともほろりとほぐれる。そして、まだ冷めやらぬ蒲焼を口へ運ぶ。よく蒸されている関東風の鰻が口の中でとろけていく。この至福の一時。わしゃ、こういう時のためだけに生きているようなもんである。美味いものが食えるということほど幸せなことはない。
残念なことに毎週毎日通えるほどお金持ちではないのだ。うーん、本当に残念なことである。