ありがとう

金本知憲という選手が阪神へやってきたのは2002年秋。それからおよそ10年が経とうとしている。
最も思い出に残っているのは2003年の日本シリーズ第4戦。序盤からの打撃戦で5-5のまま延長突入。そして10回裏の金本はこの日2本目の本塁打を放った。エース井川が打ち込まれての長時間ゲームやっただけに、主砲の一発が決めた意味は大きかった。
この日はワシが日本シリーズを観戦した最後の日でもある。
2005年9月29日。今のところ阪神が優勝した最後の日付である。この試合のウイニングボールを手にしたのは今で言う「持っている男」金本やった。
このように21世紀初頭の阪神快進撃を支えてきた金本知憲という偉大な選手であったが、何よりも素晴らしかったのは、そのチームプレーだろう。常に全力、常にチームの勝利最優先。これが金本の根底にある。
赤星が2番を打っていた2003年。金本は1塁上にいる赤星が走るまで待った。赤星が少しでも走りやすいように相手バッテリーへプレッシャーをかけ続けた。赤星は自己最高の61盗塁を記録した。
2005年には四球は安打と一緒やと敬遠を受け入れて、後ろを打つ今岡に託した。今岡は147打点で打点王を獲得した。
かつての阪神のスターというのは自分が目立てばいいという選手が多かったが、金本ほど周囲を輝かせた選手はいなかろう。しかし、周囲に注目が集まるほど金本にもスポットが当たった。
チーム成績が悪いから個人プレーに走り、個人プレーに意識が行くからチームとしては成績が落ちていくという悪循環から、チームの勝利最優先という意識を植え付けた金本の功績は数字には表れない。金本が去って行った後、この精神を継いでいくことができるか。それこそが阪神の進む道を決めるやろう。現段階で言えることは、ありがとう、もうそれだけよ。