中山の馬場を歩いてきた

ダービーの裏でこっそりと中山でバックヤードツアーをやっていたので参加してみた。
皐月賞開催日の馬場開放とは違い、全面的にコースを歩かせてもらった。千六のスタート地点から内回りコースの向こう正面、大障害を通って最後の直線へ。
歩いてみて感じたのは、やはり直線の坂が存外急ではないということ。これは皐月賞の馬場開放でも気づいたが、障害コースのバンケットと比較してみればよく分かる。直線の坂はジョギングして登るのも苦ではないが、バンケットは下から見上げると駆け上がるのをためらってしまうぐらいに傾斜がきつい。実際、ほぼ同じ勾配で登っている競馬場前の県道を走っていてもそれほど苦しくないが、中山の周囲をジョギングしていてちょうど武蔵野線のガードの辺りから船橋法典へ向かう道路を走っているとバンケットと同じくらいの急坂があり、これは結構堪える。
さらに、予想紙等でかなり軽視されていることとして、向こう正面の坂がある。最後の直線で上り坂があり、1周してくれば当然、どこかで下り坂があるのだが、それが向こう正面にあたる。1コーナー2コーナーを頂点として、3コーナー4コーナーが底辺になっていると思えばいい。つまり、最後の直線と同等に規模で下り坂が向こう正面に存在しているのである。当然、ここでペースはあがる。が、寡聞にして、その点に触れている予想紙やコース解説書を見たことがない。もしかすると誰かが書いているのかもしれないが。ダート千二でテンのペースが上がる原因の一つでもあるし、ダート千八で某木刀騎手が得意としている向こう正面からの捲りもこの下り坂があるからこそ可能なのかもしれない。
そして、競馬記者や評論家がいかにデタラメかということが分かる事実も聞けた。
高速馬場が云々というのはもう10年ぐらい言われているが、今の芝コースはかなりクッション性を高めているという。ところどころに穴を開けたり、地面に切り込みを入れることでクッションをきかせている。実際に軽くジョギングしてみたが、普通のスニーカーから高性能のランニングシューズに履きかえた感触と同じだと言えば、市民ランナーの方には分かってもらえるんじゃないだろうか。
そもそも高速馬場というのは一体、何を基準として高速というのだろうか。もし、1990年頃と比較してレコードタイムが速くなっているというのなら、それは単に馬の質が上がっただけだろう。それは世界のG1で通用する馬がたくさん出てきているということで明らかだ。馬の能力が上がれば走破タイムが速くなる。別に馬場が速くなったわけではない。
問題は、そういったことを検証したり、JRAに取材したりすることなく、自分の主観だけで記事にして騒ぎ立てている記者・評論家の姿勢にある。
他にも同様の事例を聞いた。
芝の長さについて、「今週は芝丈が短いから時計が出る」等々、馬場読みをしている記者・評論家がいるが、実は毎週一定の長さに剪定しているそうだ。機械で一定の長さに刈るので大きく狂うことはない。風の強弱で芝がなびいたりして長く見えたり短く見えたりすることがあるが、それを遠くの上層階の記者席から見た思い込みで語っているだけで、彼らが造園課等に裏付けの取材をすることはほぼ皆無だそうだ。(今週の芝丈やダートの調整について造園課に聞いた、という予想記事も見たことがない。)競馬記者・評論家は一般ファンと比べれば、関係者に取材できるという大きな特権を持っているが、それを放棄して、自分の思い込み(それも事実誤認の)を伝えてしまっていることになる。怠慢でしょ。いろんなソースから取材をし、それを総合判断し、伝えることがマスコミの仕事ではないのか?
であるから、専門紙・スポーツ紙の記者の話は漫談と思って聞き流すべきだというのが私の考えだ。あれをみて真剣に検討しても当たるわけがない。デタラメな情報ばかりなんだから。はっきり言って詐欺レベルの内容だ。(漫談程度の読物として捉えるなら別だが。)しかし、そういう一般ファンは極少数で、事実誤認のデタラメ情報がいかにも真実と思われて世間にまかり通ってしまう。JRAの中の人も大変だなあと思う。
そんなつまらんことを考えさせられた馬場見学でありました。