暗黒時代入口に思う

久しぶりに阪神の話題をしてみたい。
ちょうど選手の世代交代の時期にあたり、金本監督はじめコーチ陣も苦労しているのはよく分かる。また、金本監督の言う通り、ほぼベストメンバーを組んでいるようにも思える。はっきり言えば、あの戦力なら最下位でも当然である。その責任は現在の監督やコーチにはあまりない。ほとんどは若手を育ててこなかったフロントとこの数年間の監督やコーチにあると思う。
プロ野球に限らず、一般企業でも同様だが、人材というのはそう簡単には育たない。何度も何度も失敗するのを、上司の指導や本人の経験をもとにして徐々に成長していくものだ。時間もかかれば育成に必要なお金もかかる。そこを惜しむと一時は好成績を収めることができるが、数年後にはダメになり、極端な場合、倒産あるいは買収という事態になる。それを防ぐために、ヘッドハンティングにより即戦力を補充し続ける企業もある。それも一つの戦略だとは思うが、そのやり方で企業を維持していくためには、戦力となる社員をコントロールする首脳陣にブレない経営方針があり、その枠内に新規戦力を当てはめていく必要がある。
ここで阪神球団を見てみよう。2002年に監督が星野氏に代わり、この時に「血の入れかえ」と称して大リストラが行われた。外様コーチの招聘、トレードやFAによる他球団の選手の獲得。この時に阪神へやってきたのが金本現監督であり、片岡現打撃コーチである。スカウトも代えたことで、かつてはダメ外人の展示市だった阪神にも活躍するような外人が入ってきた。そして、2003年のリーグ優勝へとつながった。
この星野監督時代、それに続く岡田監督時代は、阪神は強かった。それは、先に述べた一時的な好成績でもあったが、両監督の方針にブレが少なかったことにもよる。外からの補充だけでなく、赤星、藤本(この両者は前任の野村監督によるところも大きいが)、鳥谷など自前の選手の育成にも成功した。
ところが、ここでその流れが止まってしまう。フロントはメジャー帰りの日本人選手獲得に躍起となり、足りないところは外国人で補うことに味をしめてしまった。監督はフロントの言いなりで自分の方針もなく、コーチは保身のために責任転嫁を続けた。そして、そのツケが今、噴出しているのである。


まず、フロントには、ぜひ育成の必要性を認識してもらいたい。ここは、指導力に定評のある掛布氏を2軍監督に配して一定の成果が現れつつあるが、守備や投手についても今後は指導力を強化してもらいたい。
1軍で戦う金本監督やコーチには、マスコミやファンの罵声に負けず、自らの信念を貫いてほしい。現役時代、鉄人と呼ばれた金本監督ならできるはずだ。
そして、ファンは目先の成績にはしばらく目をつぶって、2年先、3年先の喜びを待ってほしい。経験も少ない若手にいきなり結果を求めるのは無理な話だ。若手も必死になって練習して試合での経験を重ねていけば必ず成果が出てくるはずだ。
とは言え、最近の応援には生ぬるさを感じる。不振の鳥谷には「気合を入れろ鳥谷」、ふがいないプレーを続けてもあきらめるなと六甲おろしで発奮させようとする。
成長を見守るというのは、優しくし続けることではない。時には厳しさも必要だ。甘やかし続けた子供は甘ったれたできそこないにしかならない。厳しく躾もしなければならない。かつて、掛布2軍監督の現役最晩年や新庄のやる気のないプレーが続いた時など、応援ボイコットもあった。全力でプレーして、力が足りないのならば仕方ない。これはもっと頑張れとエールを送るべきだが、明らかな怠慢プレーによるミスや万全の状態でないのに出てきて結果が出せないようなのは叱咤すべきである。
具体的には、気の抜けたようなエラーや連係プレーのミスを続ける野手陣、明らかにどこか身体的不調を抱えているとしか思えない鳥谷(選球眼が極端に悪くなっているし、守備の足も動いていないし、判断力も鈍っている)なんかは温かい声援はいらない。もっと練習して来いとか、いっぺん休んでこいとか、そういう野次を飛ばしてやっても構わないと思うのだ。一生懸命やっての三振やエラーは構わない。しかし、最近のプレーには明らかに気の緩みからとしか思えないミスが多い。こういうのは若手だろうがベテランだろうが、プロである以上はやってはいけない。こんな草野球みたいなプレーに応援など必要ないのだ。
選手もファンもこのまま惰性で続けてたら、また暗黒時代に入ってしまうぞと心配している。