阿部和重「無情の世界」
- 作者: 阿部和重
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2003/02/01
- メディア: 文庫
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むちゃくちゃな設定でありながら、妙に説得力のある、というかリアルな展開でもって強引に引っ張っていく。
「無情の世界」の主人公みたいなガキがおったらブン殴りたくなるわな。でも、その存在感はものすごくリアルで、実際にもいるわけだ、現代は。「先生」もそう。あんな典型的なストーカーがおるんかってツッコミたくなるけど、いる。「鏖」で自分の妻の浮気現場を盗撮でおさえてやろうという中年もそう。ステレオタイプな感じがするけれども、現実に起こっていることなのだ。
だけど、好きにはなれない。そういったワイドショー的なつくりは。もちろん、作品の裏には単なるワイドショーのような好奇心だけではなく、しっかりとした思想に裏打ちされた芯が通っていることは、この人の他の作品を読んでいてもわかること。だが、やはりハナにつくのだ。