阿部和重「無情の世界」

無情の世界 (新潮文庫)

無情の世界 (新潮文庫)

阿部和重の作品は暴力的である。登場する人物がハッパをきめてバットを振り回して人がわさわさとぶっ倒れていくからではない。そのストーリーの展開が暴力的なのだ。
むちゃくちゃな設定でありながら、妙に説得力のある、というかリアルな展開でもって強引に引っ張っていく。
無情の世界」の主人公みたいなガキがおったらブン殴りたくなるわな。でも、その存在感はものすごくリアルで、実際にもいるわけだ、現代は。「先生」もそう。あんな典型的なストーカーがおるんかってツッコミたくなるけど、いる。「鏖」で自分の妻の浮気現場を盗撮でおさえてやろうという中年もそう。ステレオタイプな感じがするけれども、現実に起こっていることなのだ。
だけど、好きにはなれない。そういったワイドショー的なつくりは。もちろん、作品の裏には単なるワイドショーのような好奇心だけではなく、しっかりとした思想に裏打ちされた芯が通っていることは、この人の他の作品を読んでいてもわかること。だが、やはりハナにつくのだ。

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