松竹座昼の部

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●「源平布引滝」義賢最期
十六夜清心
まずは十六夜清心から。これは仁左衛門玉三郎のゴールデンコンビにとって持ちネタ。ただし関西初上陸。まあそれだけよ。あんまり真剣に観るもんでもないし、楽しかったらエエやろ。セリフ回しも細かな動作や表情なんかもよく情が出ていたし笑えたし、これだけでも三等の値段なら充分に満足。
が、今回は義賢最期が思いのほかよかった。愛之助、孝太郎という次代の松嶋屋を担う二人に、仁左衛門監修で自分の芸を引き継ごうという目論見。この心意気を買いたい。自分だけ目立てばいいという人も多い中、伝統芸能である歌舞伎の将来を見越してのもの。そういう意味では玉三郎よりも大きな評価をできるやろ。玉三郎なんか自分の芸を誰にも伝えてへん。まあ周りがもっと積極的に盗んでいかなアカンのかもしれんけど、今の時代、それだけではなかなかうまいことやっていけへんよ。
そして、その期待に愛之助がよく応えてくれた。初役とは思えない奮闘よ。孝太郎とのコンビで持ち役にしてほしいな。
動きに溌剌としたものがあった。平家全盛の中での源氏の悲哀や、手負いになりながら我が子を、そして源氏という家を思いやる気持ち、そういったものが積み重なって最後の最期につながったといえる。まだ粗さはあるけれども、その中にはっきりと芸を継承したいという意気込みが感じられたし、ニンにもあっている。
今月は、歌舞伎座での坂田藤十郎襲名披露の裏番組で松嶋屋一門もたくさん持っていかれている中での興行。少ない手駒ながら却ってコンセプト(仁左・玉コンビを魅せることと松嶋屋澤瀉屋の若手に経験を積ませること)がはっきりと表に出てきていてよかったんとちゃうか。