歌舞伎座「南総里見八犬伝」

通し狂言の醍醐味が堪能できた。
通常の見取りなら「筋は関係なく綺麗なところだけ」の入門向きとか「筋を重視で地味なところだけ」の通向きとか偏ることが多い。けど、通しなら筋を追いつつ見せ場もたっぷりという贅沢なことができる。
今月の里見八犬伝もかなり贅沢。出演者の顔ぶれとかそういうレベルじゃなく、根本的なところで。物語としてのストーリー性、立ち廻りやだんまりの様式美、衣装や舞台の美しさ、大薩摩などの音楽など。歌舞伎の要素が詰め込まれたもので、初心者が見ても面白いだろうし、見慣れた人が見ても、演目の珍しさもあるが、見所がある。
今回、幕見で観たが、いつもより外人や学生っぽいのが多かった。夏休みで、日本へ観光旅行へ来た人たちやまあ暇つぶしに目新しいものを見てみようという人たちかな。外人はよくわからんよ(驚嘆の声とかあげてたから楽しんでいたとは思うけど)。初めて見た学生っぽいのが「意外と面白かった。1600円でこれだけ楽しめたらいいかも」と連れと話し合っていたのを耳にはさんだ。一ファンとして嬉しいね。いや、実は演目の内容自体よりも嬉しかったかもしれない。そういうのを発見してくれて。日本人として日本文化に触れるという当たり前のようでいてなかなかできないことを経験してくれて。
肝心の芝居のほうは、三津五郎丈奮闘でしたね。1部、2部を観てないから何とも言えないけれども、これだけの数の役をこなすというのも大変だと思う。休む暇もなくて。里見八犬伝はどの役も重要な役なわけやしね。型は踊りの家だけあって元々うまいと思うんだが、セリフ回しなんかもよくなってきていると思う。