トーマス・マン「ゲーテとトルストイ」
- 作者: トーマスマン,Thomas Mann,山崎章甫,高橋重臣
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1992/12/16
- メディア: 文庫
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そうか。1922年に書かれてるんか。
時代背景が必要である。といっても大袈裟なものではなく、中学の社会程度の知識で十分。
ドイツは第一次大戦で負けてナチが出てくるところ。イタリアではムッソリーニが出てきて、スペインは軍事政権。そして、ロシアは革命によりソ連へ。
そんな政治体制の大きく変動したドイツやロシアを取り巻く環境、いや、ドイツ。トーマス・マンがはっきりと最後に書いているように「ドイツ・ファシズムへの敵意」である。
そこへ持っていくのに「教育」を重視しているわけだが、そのためにゲーテでありトルストイが必要だったと。さらには、「人文主義的教育」を施すこと。そのためのゲーテであったわけよ。
その上で、シラーとドストエフスキーを対極において四者の比較で論を進める。「自然」と「精神」。自然はゲーテとトルストイであり、精神がシラーとドストエフスキー。一方、ドイツ的なゲーテとシラーであり、ロシア的なトルストイとドストエフスキー。もちろん、トーマス・マンがゲーテを念頭において話を進めているのは言うまでもない。
しかし、大事なのはいずれもの中間、中庸であること。それこそが真の国家主義であるというのである。ロシアの共産党も、ファシズムも極端に寄りすぎている。それに対する批判である。
ご存知の通り、トーマス・マンはその後ナチの迫害から逃れるために亡命することになるが、それもこの辺からの流れなわけだ。