河竹黙阿弥「鼠小僧」

鼠小僧 (岩波文庫 黄 263-3)

鼠小僧 (岩波文庫 黄 263-3)

なるほど。この芝居が出ないのも分からないでもない。
まず第一に冗長な場面が多い。特に三幕目の夢オチなぞ、全体の筋からしたらあってもなくてもどうでもいい。何ら影響力を及ぼさないようにも思える。花魁の為所がたくさんあるとはいえ、それなら別にこの芝居でなくてもよい。もっと華やかなものはいくらでもある。
謂れなき罪で囚われている者たち、これはほとんどが鼠小僧所縁の者たちであるが、一組、つながりの薄いものがある。大詰めで無理やり「つながる御縁」と言わせてみるがかなり強引である。
そういったところをズバズバと刈り込んでいくと、今度は素っ気のないものになりがちで、しょせんは初春芝居かというところですわな。筋立てよりも適度に役者の技量をみせて、適度に立ち回りをして、最後はめでたく締める。