レヴィ=ストロース「悲しき熱帯1」

今秋にひっそりと亡くなっていたが、大型書店でも「生誕100周年」としかキャンペーンをやっていない。まあ若い書店員なんかは全然読まんのやろうし、名前すら知らんというのも多いんやろ。せめて心ある店員が1人でもおったらすぐさま生誕をやめて追悼にすげ替える方がええんちゃうんと。
そんなわけで、ワシも読んでみた。これ、ものすごく読みやすいな。ヘーゲルとか読んだ後やと特にそう感じられると思う。哲学の本いう意識で避けたりしとったら勿体無い。
体裁としてはもう旅行記といっていい。まだ前半部分だけではあるが、第二次大戦の始まる前、あるいは戦中ぐらいの話で、その頃に船旅でヨーロッパから北アフリカを経由してブラジルへ。個人的にはここで「カサブランカ」を思い出してしまってしょうがない(笑い)。そのブラジルでの原住民の生活を再構築しているわけだ。
ところどころにいわゆる構造主義の考え方が披露してあって、部族の慣習がうんたらかんたらみたいな具合。そこに至ってようやく思想書を読んでいるということを思い出すが、全然不自然さがない。スッと構造主義が頭に刷り込まれるというのか。
しかし、これも考えてみれば現代では当たり前のように思われていることで、何でもかんでもヨーロッパやアメリカのやり方を持ち込めるわけではない。それぞれの土地に固有のしきたりがあって、そういうのが社会の枠組みを決めてしまっている。だから他所もんを輸入しても定着しないし、効果も上がらない。逆のケースも多々ある。とはいえ、いまだにコメリカ帝国のやっとることは変わっていなくて、ホンマ、コメリカ政府の連中に必読書として読ませてやりたい。ついでにどこぞの極東にある与党連中にも。