高田瑞穂「新釈現代文」

新釈 現代文 (ちくま学芸文庫)

新釈 現代文 (ちくま学芸文庫)

太古の時代に使ったことのある記憶もなきにしもあらず。あらためて21世紀に読み直してみると、貫かれている主張は何十年も前に行き詰ってしまった個人主義というのか、近代合理主義というのか。それは話題になっている入試現代文(もはや近代文やけど)自体がそういう色を帯びているので、読み解いていくと自然そうなってしまうのもあるが、数多ある問題文から選んだわけやから、まあ主張されていることは古い体質といってもええやろ。
ただ、読み解いていく手法そのものは決して古びていなくて、むしろ、自説を曲げずに突っ張っていくと角が立ってしょうがないこの現代において、他人の、それも全然違う主義の、述べていることを素直に受け取り、解釈し、処理していくテクニックは、より重要なのではないかとも思う。それを消化して昇華することは、書かれた文章を著者の主張どおりに解釈してからの段階よ。手間はかかるが王道ではあるわな。