ニヒルなアヒル

己はニヒルなアヒル
世の中に対する憤懣。真理と不幸の押し売りに、正義を振りかざす暴力者たち。
ああイヤだイヤだ。
こんな世界など滅んでしまえばいい。
その時は己も一緒に死ぬのだ。
そう思って遠くから眺めている。
正義なんてマヤカシだ。正義と正義とがぶつかり合って、一方の正義は誤りとなり、一方の正義は正義たることを守るために次の正義に対峙する。そしていつかは敗れて正義ではなくなる。
本当の正義はどれだ?
どれも正しくないのか?
問い詰めてみても答えは出ない。
どれも彼らにとっては正義であり、他人にとっては正義ではない。
そのぶつかり合いから生じる不幸。
右の左の旦那様。哀れなこの不幸者にお恵みください。
反吐が出る。
自分だけが、この世で一人自分だけが不幸な思い込み。私を見てくれ、そして私を助けてくれ。私より不幸な者は誰もいない。
甘えるな。
不幸の押し売りは正義の押し売りより粘着だからタチが悪い。
自分が不幸だと思うのなら、少しでも不幸でなくなるような努力をしないか。この怠慢野郎が。
こんな連中と同じ社会に属していると考えると己にも厭気が差してくる。
だが。
こうしてガーガー叫んでいるだけの己も、
実は彼らと大差ないのではないか。
オレはニヒルなアヒル
ただ絞め殺されるためだけに生きる。