オーケン

グミ・チョコレート・パイン グミ編 (角川文庫)

グミ・チョコレート・パイン グミ編 (角川文庫)

ふとしたキッカケでオーケンの「グミ・チョコレート・パイン」をぶっ通して読んでみた。一番最初に出た時(もう20年近く前になるなあ)に単行本をチラッと立ち読みしたことはあったんだが。
オーケンのはちゃめちゃな世界観はワシにとって懐かしきおもひででもあり(筋少ファン歴20年以上やっとるからな)、至る所に筋少ソングの歌詞が散りばめられていて、そういう意味でも楽しめた。いや、書いている時期を考えたらまさにリアルタイム進行なわけだ。
よくまとまったグミ篇から突っ走り始めたチョコ篇までは佳作。青い青い時代のお話です。もうワシが20を超えてからやり始めたような雑読と気が向いた時の映画やら「バンドダサいぜ」と言いながらロックを聴く。そういう世界で、童貞どもがオナニーしまくるという展開。もちろん、ストーリーもオナニー進行。それが青春というもの。世界が自分のために回っていると考える人種と、世界は自分以外のところで回っていると考える人種と。しかし、どちらも自分の脳内で作り上げたオナニー的世界観でしかないわけである。この中でのバカ者どもの苦悩、葛藤やら。青い青い。しかしなぜか自分の心に突き刺さる。
惜しむらくは、パイン篇。オーケン本人が書いているように登場人物をみんなハッピーにすること。それから、やや時期が遅れて書かれて作者本人の精神状態も影響してか、前2篇では全く描かれる意図のなかったこと、例えば宗教的思想であったり、不安神経症への立ち向かい方であったり。これらを全てミクスチュアしようと試みたが、やっぱりうまくいっていない。ケンゾーが突然ノイローゼになり、その自己解決は妙に仏教臭くなり、挙句には落ち目のトップアイドルさんの楽屋へあっさり侵入してあっさり仲間になってしまうという強引な筋。もう本当に作者の都合のいいようにしか流れていない。
いろんなことをゲンダイの若者に伝えたいというオーケンの気持ちは分かる。しかし、これは詰め込みすぎだ。当初の「オレらは他のバカどもとは違うんだぜ」という勘違いから「なんだ、オレらってしょせんはクズなのか」と気付き、しかし「オレらだってやるときはやるんだぜ」みたいな流れが本筋だろうし、CMNRの3人は少なくともその流れに沿ってきてラストを迎える。そこからケンゾーの筋が脱線しまくって、新興宗教ヨロシク、あれもこれも解決だ!と。いや、やりたいことはよく分かるし、アンタの音楽を、歌を聴いていたら納得できる。だがしかし。1枚のアルバムに筋少の歴史を全部詰め込みましたというベスト中のベスト盤を作れるかということだ。そんなの無茶でしょ。シングルだけを集めてみるとか、お気に入りの曲だけを集めてみるとか、そういう方向性がなければ限られた時間、ページ数で表現しきるのは不可能だ。
そう。もう1冊書けばよかったんよ。何もパイン篇でまとめきらなくても。
そういうやや不満感をもっての読了。しかし、休みの日の日付が変わってまで読み続ける自分もアホよのお。