賞金額からみる障害未勝利戦の考え方

障害未勝利戦を検討し、レースを観ていると、たまに腹の立つことがある。
人気を背負っているにも関わらず、後方からレースを進めて、勝負どころの3角でも動かず、4角に入ってきてようやく中団に取り付くようなレースを見た時だ。
大体、こういう馬は3着とか4着ぐらいを繰り返していて、着順がいいのでそれなりに人気になる。
が、実はこれが一番買ってはいけない馬だったりするのかもしれない。


そもそも障害の未勝利戦はめちゃくちゃペースが遅いので、逃げられない馬というのはまず存在しない。馬の気性(逃げるととことん行ってしまうとか馬込みが嫌いとか)もあるだろうが、大半は人間の思惑ではないかと推測するのだ。
では、どんな思惑が働いているのか?
いろんな側面はあるだろうが、一つの大きな要素として賞金を挙げたい。


障害の未勝利戦の賞金額は、JRAのどの競馬場でも一律で、
1着 700万
2着 280万
3着 180万
4着 110万
5着 70万
である。
このうち、8割が馬主に入るので、それぞれ、560万、224万、144万、88万、56万が馬主の収入となる。
馬主が厩舎に支払う預託料が月に60万円程度と言われているが、5着に入ればこれをほぼ稼げてしまう計算になる。
馬主としてみれば、最低限でも損害は出したくないだろうからこの程度でも稼いでもらえれば助かるだろう。ましてや、障害の未勝利戦に出てくる馬だ。よほどのことがない限りは、もう平地ではビタ一文稼げる見込みのない馬が、預託料だけは咥えてきてくれるんであれば文句はないだろう。
しかし、一度勝ちあがってしまうと、もうクラスが存在しないのが障害レース。OPでは勝負にならない馬も多い。そんな馬が万が一、未勝利戦を勝ってしまったら。もうどこへ行っても稼げない馬になってしまうので、引退させるか、地方へ出してしまうか。だったら勝たないようにして、それでいて賞金を稼がせるのが得策だろう。
幸いなことに、障害戦というのは直線一気の追込はまず決まらない。道中で後方にさえいれば間違っても勝つことはないのだ。それでいて、4角で6番手7番手ぐらいにつけられれば、バテた馬を2、3頭交わすことはできる。


障害の未勝利戦を10戦近く消化して、毎度毎度後ろから追い込んでやや届かず、今度はきっちり先行できれば勝負―
という馬は、馬主や厩舎サイドが全く勝つ気がない、というより負けるように使っているので、絶対に買ってはいけないのだ。
詐欺みたいなもんかもしれないが、これも競馬。買う方がよく気をつければいいだけのことだ。