有馬記念考

今年の最大のポイントはオルフェーヴルだろう。
盲目的に「オルフェ鉄板!」というには早いと思うのだ。
確かにオルフェーヴルは一昨年の有馬記念勝馬であり、有馬記念と好相性の宝塚記念勝ち馬でもある。この2レースを確認してみよう。


まず有馬記念。このレースは一言で言うと、「中山らしくないレース」だ。
上位6頭の上がりが33秒台で、オルフェーヴルは33秒3。普段から中山のレースをご覧の方はすぐ気づくだろうが、考えられない。
レースのレベルが高いのもあるが、それにしてももっとも遅い上がりですら34秒6。途中にハロン14秒台が2回も続くほどのスローペースだった。レース自体は残り1000mを切ったところから動き始め、12秒0、11秒9、11秒4、11秒3、11秒3とゴールへ向けて止まることなく加速していく。


一方、ゴールドシップの勝った去年のラップをみてみよう。
対照的に上がり最速のゴールドシップですら34秒9。36秒を切ったのが5頭だけ。ラスト5ハロンのラップは11秒9、12秒1、12秒1、11秒9、12秒0。
同じ名前のレースだが、まるで別だというのが分かるだろう。


宝塚記念のラスト5Fは、オルフェーヴルの年が12秒5、12秒6、11秒6、11秒6、12秒1。ゴールドシップの年が12秒3、12秒4、12秒7、12秒7、12秒6。
オルフェーヴルがラスト1ハロンバテてしまったものの、本質的には有馬記念と同じだ。オルフェーヴルが一度最高速に達したら2ハロンから3ハロンは持続させるのに対して、ゴールドシップは平均的にそこそこ速いラップで押し切る。


実はここにオルフェーヴルの弱点がある。
オルフェーヴルのメチャ速上がりは最大でも3ハロンぐらいしか持続しないのだ。
去年の凱旋門賞ジャパンC、今年の凱旋門賞。全てこれで説明できる。ロンシャンの直線入り口から仕掛けたら脚が持たないし、府中の直線も同様なのだ。だから最後にヨレたり、競り負けたりした。
それを同じレースに乗っていたムーアは当然気づいているだろう。


ムーアが取ると思われる作戦はただ1つ。
オルフェーヴルに3ハロン以上脚を使わせる」


何のことはない。
早仕掛けしたらいいだけのことなのだ。
多少仕掛けが早くても、ゴールドシップは35秒ぐらいで上がりをまとめられる。
3角出口の残り600の地点でオルフェーヴルと1秒差があれば、オルフェーヴルは33秒台の上がりを発揮しなければならない。
おそらく良馬場なので、オルフェーヴルは少なくとも2ハロンは11秒前半の脚を使うだろう。合わせて1秒ゴールドシップとの差を詰められる。一昨年同様にもう1ハロン同じ脚を使えれば1秒半。
だからムーアは、3角前から動いて(あるいは先行して)、3角出口でオルフェーヴルに2秒差(10馬身ちょい)をつければ勝てる。絶対、120%勝てる。
不可能じゃないと思う。


今年のメンバーは逃げ馬がいない。
おそらく、チームプレーでトーセンジョーダンが逃げてペースをスローに落とすという魂胆だろう。これに乗るのが内田だ。
内田の心境やいかに?
降ろされたゴールドシップには勝たせたくないか?
それともやっぱりゴールドシップに勝ってほしいか?
あるいは一発狙って乗るか(笑い)
そこの駆け引きも見どころだ。
が、いずれにせよ、ムーアが強引に捲ってしまえば作戦もへったくれもない。
ここに賭けますか?