競馬場の芝

ちょっと前に読んだ本を紹介しよう。

なぜ今この本を取り上げるのかというと、今の中山の芝コースに感心しているからである。
先週日曜のメイン、OP特別の春雷Sの勝ちタイムが1:08:3。前日まで稍重で良馬場に回復したとはいえ、かなり稍重に近い良馬場だと思われる中での時計がこれだ。重賞だったら7秒台が出るんじゃなかろうか。
この事実をもってして、すぐに「高速馬場は馬の脚に負担がかかるからよくない」という20年以上昔の方はこの先、読んでも理解できないと思うということをあらかじめ断わったうえで、
この時計が出る今の中山の芝コースはすごいと思う。
20年ぐらい前の皐月賞の週といえばボロボロの馬場が当たり前だった。やむを得ないからBコースからAコースに移すという荒業を使い、武豊騎手からはグリーンベルトができて不公平だからB→Aのローテーションはやめてほしいという苦情が出たそうだ。(この件については、紹介した本に書いてある。)
この数年での造園技術の向上には目を見張るものがあり、エアレーション作業だとか、野芝の一種であるエクイターフの導入といったもので、その辺りの経緯が書かれているのが上記の城崎さんの著書である。
簡単に説明すると、エアレーション作業というのは、馬場に切れ目を入れたり、穴を開けることで芝の根付きがよくなるそうだ。(ものすごい乱暴な説明ですいません。)エクイターフというのは、JRAが全国の野芝を集めて調べた結果、一番丈夫で長持ちな品種を栽培して品種登録したものだ。どちらも中山に取り入れられて数年たっている。
それ以上に勉強になったのは、野芝の成長する時期についてである。
野芝って、夏場、梅雨明けぐらいから9月ぐらいまでしか成長しないそうだ。
多分、ほとんどの競馬ファンにとって初めて耳にする情報じゃなかろうか。
大体、そんなこと気にする人ってあんまりいないだろう。
でも、これが非常に重要なことで、夏に野芝は成長するので、一番いい状態の芝コースは9月の秋競馬開幕の時期になる。中山や阪神だとちょうど成長が終わる頃に秋の開催が始まり、東京や京都は成長が終わった後に秋開催が始まる。
そして、これも放っておいて自然に生えてくるものではなく、春の開催が終わったら、傷んだところは新しい芝に植えかえる。中山は4月に春開催が終わるので、植え替えの時期が長く取れ、成長の時期にレースをほとんどしないので理想に近い状態の芝コースが出来あがる。
これが阪神だと、宝塚記念の開催があるので、少し芝の植え替えのスタートが遅れるため、中山ほど芝の根付きがよくない。東京や京都はまあまあ。
最悪なのは福島と中京。芝の成長期にレースをやっているので植え替えられず、すぐに秋や初冬にボロボロにされてしまう。全然根が定着しないので、高松宮記念の頃には中京の芝はボロボロだ。福島も夏の開催はあっという間にボロボロになる。だから高松宮記念の日にはちょっとの雨であんなに悪い馬場になる。
で、今年の中山である。
これが史上最高といってもいいんじゃないかと思う。とにかく芝コースがあまり傷んでない。
なぜか?
去年の秋に開催をしていないからだ。
成長期をまるまるレースで使われることなく過ごして、相当いい状態なのだ。
だから今週、どんだけ大雨が降ろうと、そう簡単には馬場が悪化することはない。
少しずつ外差しが決まるようになってきているとはいえ、まだまだ前も止まらない。今年の皐月賞はそんな馬場で行われるということを頭に入れておいたほうがいいだろう。(当然、時計が速いから故障する馬が出るとか、そういう次元の話ではない。)