中村屋

勘三郎緞帳

松竹座で中村勘三郎襲名披露公演を観劇。予想していたこととはいえ、筋書2,000円は高い! まあ写真てんこ盛りなんでしゃあないか。
寿曽我対面
もう余りモンのメンツと思って期待はしてなかったけど、意外にもよかった。染五郎の五郎と勘太郎の十郎が。勘太郎は溌剌としていて若さがよく出ていた。
源太/藤娘
源太は三津五郎。さすが坂東流家元だけあって巧い。が、その後に勘三郎の藤娘を観たらかなり印象が薄れた。順番の後先やない。勘三郎の藤娘は下手ではないけど決して巧いとは言えない。が、所作に惹きつけられるものがある。もっと分かりやすくいうと、「華」がある。野球で言えば、巧打者の三津五郎首位打者で、勘三郎は新庄。打率は.250しかないのにものすごい存在感とスター性を持っている。唸るような美しさはないけど魅力あふれる藤娘。早替りはお手の物で長唄もいつもより短めに弾いておりますw
口上
なんかなあ、みんなマジメすぎるんよ。もっと面白いこと言ってくれると思ってたけどな。福助だけは期待を裏切らんかった。
「…(略)勘太郎七之助という若虎が猛虎になれますよう…(以下略)」
さすがトラキチ福助。エエでエエで。
伊賀越道中双六 沼津
これは圧巻。東西の名優の競演。西の仁左衛門と東の勘三郎。情味溢れる沼津。冒頭の沼津棒鼻の場ではおどけた滑稽な演技を見せたかと思えば、幕切れの千本松原での親子の情と主への義理に挟まれた十兵衛の苦悩を見事に演じた仁左衛門と、娘の敵が実の息子と関係があると知り、自害して敵の居所を尋ねだそうとする平作を道化から一転してシリアスに演じた勘三郎。この二人の芝居には地味な演目でもそこに意識をひきこまれてしまう。今日一番の出し物。観られてよかった。


夜の部で「野田版 研辰の討たれ」を上演しているが、「野田版〜」や串田和美とのコクーン歌舞伎、あるいは一連の平成中村座のように古典を現代風にアレンジしたものばかりが注目される勘三郎だが、彼は伝統的な型も大事にする。むしろ、伝統の型があっての現代風歌舞伎ともいえる。下地がしっかりしているから時代の流れに合わせることができ、それでいて時代に流されないでどっしりと構えていられるのではないか。今後数十年は歌舞伎界のみならず日本の演劇界をリードしていく存在になるだろう。