トルストイ「戦争と平和(一)」

今年最初は大作からスタート。初手からコケてたらアカンと思う。だから読みごたえのあるものをということよ。
正直、第1篇はけっこう苦痛で読んでいて退屈なところもあった。まだるっこいんよ。いつまでたっても夜会の話ばかりで。話はいうと遺産争いやとか政略結婚やとか。それも複雑な筋ではない。どころか単純極まりない筋で、それが逆に単調に感じて苦痛なんよ。ここでつまづくモンはかなりいるんとちゃうんかな。
そこを乗り切ると一転戦場の話になり、時折、銃後の話が織り交ぜられてスピーディーでダイナミックな展開をみせる。そこから興が乗ってくる。ここまで来たら続きを読むのが楽しみでしょうがない。
こういう「読ませる」ということも大事やと思うし、読まれなければどれだけいいものでも意味がない。
そして、これが単なる戦争の話と色ボケの話であれば世俗小説でしかなく、百年以上にわたって読み継がれることもなかったろう。戦争反対だけでも然り。そんな俗っぽいテーマを超えて人間の尊厳であるとか、歴史の創られ方なんかがえぐりだされているのが第3篇まで。
人は金や名誉のために生きたってしょうがない。死んだら一緒なんやし。何のために生きるのか? それこそが人間の存在のテーマでもあり、そのテーマを追求していくことで人間の価値がはっきりとしてくるのであろうし、また、分からないところでもある。
自然に比べたらちっぽけなもんよというのは陳腐ではあるが、実際そうなんよね。人間がどんだけあがいたところで自然には勝てないし、人間の影響を及ぼしえない力というのがある。そういうものに対する畏敬を持つことで人間も尊重することができる。
歴史の創られ方は、まあ二巻以降もあるけど、次の機会にしようか。歴史とは為政者の都合で編纂されてきた記録の断片をつなぎ合わせたものであり、それらの事件は為政者が意図して行ったものではなく、むしろ意に反して起きた偶然である。というのはオレも10年ぐらい前から思っていたこと。