芥川龍之介「奉教人の死」

奉教人の死 (新潮文庫)

奉教人の死 (新潮文庫)

実は岡山へ出る前に読み終わってたんやけど、そこであれこれ書くのもアレやし、昨日は帰ってきたらしんどいしで、ノビノビ。
なかなか風刺の効いたキリスト教ものの一連の作品で、個人的には「黒衣聖母」なんか好きであったりする。ざまあみろというのか。捻くれとるなあ。
ただ、思うに、日本に入ってきてからのキリスト教というのが、全く本来のものとは違うもので、「神様はキリスト様だけです」とかいうても、キリストは神でもないし、そういう教えは一切与えていない。仏や観音が「木や石の偶像」というくだりがあったけど、まさにその通りで、イエスを崇め奉るのも単なる「偶像」でしかない。そこら辺を鋭く突っついているのが小気味よくて、なかなか愉快な一冊である。
が、皮肉で止まっているというのが残念なところ。まあこれ以上書いてもくどいし、短編としてのまとまりもつかんしね。それはしゃあないけど、全部が全部、和風キリスト教の皮肉に終始していてハッテンがみられないというのもなあ。