チェーホフ「桜の園・三人姉妹」

桜の園・三人姉妹 (新潮文庫)

桜の園・三人姉妹 (新潮文庫)

10年以上ぶりに読み返してみた。内容はすっかり忘れていたので、実質初見みたいなもんである。
どちらもいわゆる世紀末的社会というものが背景になっているというのもあるが、暗い。
暗いが、救いはある。
桜の園」は、読んでいて太宰の「斜陽」を思い出させる。没落貴族の哀愁というのか、世間知らずというのか。でも、こういう人種は個人的には好きである。少なくとも、金をうなるほど持っているのに乞食に恵むひとかけらのパンすらケチるというようなしょうもない輩よりは清々しい。カネと言うのはこのように使うべきなのである。なあ、どこぞの電鉄会社よ。
「三人姉妹」では一転攻勢に転じて、あこぎなババア(歳はとってなさそうだが、性格的に因業婆でええやろ)であるとか、若さゆえに決闘へ走ったりする軍人がいたり。そういう社会の構成というのか、風刺的な意味合いもあったのかもしれない。最終的にハッピーエンドを迎える登場人物はほとんどおらん。なのにそんなにじめじめした読後感がないというのは不思議なものである。