コストカッター

隣の係(すなわちくどいようだがワシが前にいた係)の残業な毎日の真相が次第に明らかになってきた。
今日判明したこと。
ワシが前任者から引き継いでグレードアップさせた集計表を、こともあろうか、単なる手計算手入力集計表に退化させていたのである。
ワシの残してきた作業ファイルの中には、確かにマニアックなVBAを組んでワシが保守契約せにゃならんもんもあるのは否定しない(し、ちゃんと保守している)。
しかし、この集計表、エクセルの関数のみで処理していて、しかも、せいぜいIFとSUMIFとROUNDDOWNぐらいしか使ってない。IF文の中にSUMIFを組み込んだりしているだけで、10分ぐらいかけて読み解けばそれほど複雑なことはしていない。(というより、関東六大学や関関同立クラス出てるんやから、それぐらい理解しろよと)
どうやら途中で解読を放棄して、こともあろうか手計算という原始的手法で1年間乗り越えてきたようだ。
一言言わしてもらおう。


アホか。


分からんことがあったら、質問する。社会人というより、人間として当たり前である。
分からんもんを分からんまま放置しておくなんて、出来の悪い小学生か中学生と一緒よ。
ましてや、分からんこと自体を黙っているというのは、授業中にしょんべん漏らしてもそのまま手も挙げられずにいるのと一緒(そして、周りから「しょんべんたれ」とバカにされるのがオチ)。


なぜ発覚したかというと、4月から異動してきた後輩に、そのめんどくさい(そら手計算してたらめんどくさいわな)作業を投げつけた。その子は疑問点はきっちり解決して合理的にやっていくほうやから、不思議に思ったんやろう。そもそも、その隣のシートにはワシの改良した数式入りの同じ体裁の表があるんやから、何でそっちを使わんのかと思ったようだ。ただ、関数が分からんとこがあるから教えてほしいということ。SUMIFを見たことがなかったみたいなんよ。そら教えるよ。それで理解してくれたら話は早い。
気の毒やから、去年制度がちょっと変わったのでそれに対応する数式に直してあげた。この間、15分かそこら。
このたった15分で、手計算する数時間(時には数日間)が浮くわけである。それは絶対に惜しんではいけない15分やろう。


自分で言うのもなんやけど、ワシはかなりのコストカッターであると思う。
行く先々でエクセルを活用してお手製システムを残してきた。
というより、それまでの仕事があまりにお粗末で、無駄だらけやった。


1.同じデータを2回も3回も手入力する。
2.エクセルの表の形をしているが、せいぜい合計か平均ぐらいしか関数を使っていなくて、手計算した結果を手入力する。
3.極めつけは連続データの手入力による転記。


ちょっと考えたら、全部1回のデータ入力に集約できる。
1.は、データベースの考え方さえ知っていれば簡単なことで、その時々に必要最低限のデータだけを入力して、例えば名前とか毎度重複するデータを何度も何度も入力するという馬鹿げたことをしなければいい。
実際には、規模の小さな財務関連のデータであるが、まず収入支出の伝票を起こすのにデータを入れる。
次に、そのデータを元帳に入力する。
最後に、それらを電卓叩いて決算表(月次報告書)を作る。
これらを集約しただけである。伝票を起こす時に、必要な科目やら項目、金額、日付やら。後々必要になるデータを起票時にデータベースへ転送してやるだけである。もちろん自動で。
そこから集計関数で元帳や決算表が作れる(若干VBAを使ったが)。
これで三度手間が1回の入力で終わるようになったし、転記する時の間違い(このやり直しもまた時間の無駄や)もなくなったし、1ヶ月あたり何万円か何十万円かの人的コストを浮かしたやろうと踏んでいる。

2.なんかは、いくら年取って物覚えが悪くなってきたからいうても、英単語を2個か3個覚えるのとそんな変わらん労力やろう。それすら惜しむっちゅうのは向上心のなさ。何もエクセルの全関数をマスターせえというのではない(あれ、全部覚えても一般人には使い道のないもんが半分以上やからね)。会社で使うレベルのもんはせいぜい10か20。でもこの10か20の関数を使うだけで、丸1日かかる作業をたったの数分で終わらせることもできる。あんた方の日給いくらよ?って考えたら、2千円か3千円ぐらいの本を買って行き帰りの電車で読むぐらいできるわな。(ワシはそんなカネは惜しいから全部立ち読みで済ませたが)

3.は発想の転換。コピーして貼りつけという作業を繰り返してもええけど、例えば、フィルタをかけて不要な行は非表示にしたら1回のドラッグで必要なエリアを全部コピーできるでしょっていうレベル。アホみたいに1行置きにコピー、貼りつけ、コピー、貼りつけ、ってやってたらそら腱鞘炎にもなるわな。


というのを思いつかんかね?
作業に入る前に、効率的な作業方法を考えてみんかね?
ワシの場合、作業に入る前に、「どうやったら手を抜けるか」というところから始めてるだけではあるが(笑い)。
けど、この「手を抜く」というのはコストカットにおいて非常に重要で、効率的というのは突き詰めたら「どんだけ手を抜けるか」ということにつながってくる。人的コストを計算に入れられない連中には何を言うても「サボりたいだけやろ」と言われるが。まあ、そういう方々には「そらおんなじ給料やったら絶対に楽な方がええで」と言い返しておるわけである。


もう1つ、この話で大事なところは、「前任者の作ったものは活用する」ということ。
全く同じ仕事をするのに、3つのパターンがある。
1.前任者と全く同じとおりに処理する
2.前任者の使っていた方法に手を加える
3.前任者の使っていた方法は無視して、自分のやりたいようにやる
普通は、まず1から入る。何回かやっているうちに「こうしたほうがええんちゃうん」というのが出てくるから2に移る。これが効率化の正しい道やろう。まあ、たまには無駄なやり方に変わっていくことはあるけど、大きく道を外れることは少ない。
しかし、3のパターン。これで以前より効率化できるというのは、これはもう天才としかいいようがない。そういう天才の御方には何も申し上げません。しかし、99.9999%の凡人がこれをやったら、単なる時間の無駄遣い。
まず、0からやり方を考える時間がもったいない。
次に、何人も受け継がれてきたもの(すなわち改良されてきたと思われるもの)を超えるレベルにいきなり達することができるか甚だ疑問。
そして、行き着く結論(方法)は結局一緒やったりする。
例として、在阪セリーグ球団の去年の監督をみたら分かるやろう。
せっかく前の二人が構築した継投策をぶっ壊して、個々の選手のダメにして、チームとしての機能も崩壊させた。
打線もこれはさらにその前から三人が耕して種をまいて花を咲かせてきたのを、根っこから引っこ抜いた。咲きかけた三番鳥谷という蕾をむしりとったり(これはさすがに途中で気付いたようだが)、定着してきた選手をわざわざ使い分けてモチベーションを下げたり(だからFAするんよ)、その穴が埋まらんまま困ってみたり。
そして今年行き着いた継投策は、駒は足りないものの、前任者の形に戻しただけ。でも時すでに遅しで、肝心のピースがはまらない。いっぺん壊したもんは元には戻らんのである。


というようなことを、なぜワシは、傍から見てるだけで済む野球観戦のみならず、仕事上で実感せにゃならんのか。
どんでんのイライラが分かるわ。