死刑台のエレベーター

早稲田松竹で今日までやっていたので、休みをとって観にいってきた。
もちろん、オリジナル版。ルイ・マルの方だ。このストーリーは21世紀には無理がありすぎるだろ、リメイク版。
ルイ・マルの「死刑台」と言えば、当然、マイルス。もうこの映画、マイルスを聴くだけで観るに値する。即興でつけちゃったわけだから、やっぱりマイルス最強。それが本編の展開を邪魔することなく効果的に使用されているもんだからルイ・マルも大したもんである。
さて、肝心のストーリーはというと、まあ、アホすぎる。突っ込みどころが満載なのだが、そういうところを笑い飛ばす映画なんだろうか。
まず主人公のジュリアン。愛人にてめえの旦那の殺害を依頼され、計画通りに実行したはずなんだが、なぜそこで鉤縄を外し忘れるか。急な電話が鳴っていたというのもあるが、用事の後に外して帰らないと、用心をして内鍵まで閉めた意味がなくなるじゃないか。よしんば、帰る直前に気付いたにしても、そこで実弾満載の拳銃と不倫現場を撮ったカメラを入れたままのオープンカーをエンジンつけっぱなしにして離れるか? あれでは「どうぞ泥棒さん盗んでください」と言っているようなもんだろ。
その車を盗んだルイにしても、衝動的にコロシをしてしまうというのはありがちな筋だが、証拠写真を取りに現場へご本尊が戻ったら逮捕以外にありえんだろ。いや、これは爆笑させてもらった。普通戻らんよね。だって、新聞にまで出てる事件の現場に警察がいないわけがない。そこに証拠写真に写ってる本人が現れたら警察だって「ここはどこの入れ食い釣堀よ」って思うわな。こんな楽に犯人逮捕できるんなら警察いらんわ。
そして、それを止めない花売り。睡眠薬の致死量の計算すらできない低脳ぶりをみせつけてくれる。
総じて、みんな中卒かよというぐらい頭が悪い。頭が悪いというか、考えたら普通やらんだろということばかりなのだ。そういう連中を笑ってやるのがこの映画の正しい見方なのか?? まあ、第二次大戦終戦後の話なので、まだそういう低脳がわんさかいたんだろうな。ギャグ映画としてとても楽しめた。え、これってシリアスな映画なの?
まあ、冗談は抜きにして、一つひとつのシーンはきれいで、カメラワークなんかも含めて名作と呼ばれるだけのことはある。昔のモノクロ映画は、現代のハイテク映画なんかよりもずっときれいに撮れている。技術的には現代の方が当然遥かに上なんだが、1960年ぐらいの映画より美しく撮れている現代映画はあまり観たことがない。3D? そんなもん必要ないだろ。映画で絵が飛び出してきても掴めるわけじゃなし、二次元の絵をいかにしてそこにあるかのように見せるのが技であって、CG処理でお手軽加工して子供騙しの錯覚なんぞ、本当に子供向けでしかない。そういう安直な発想が半世紀前のモノクロ映画に劣る理由なのかもしれない。