内ばかり伸びる馬場について

最近のレースの傾向をみて「内ばかり伸びる馬場はつまらない」という方が多いが、それは間違っている。
正しくは、
伸びる馬場
である。
よくレース映像を見てほしい。例えば、先日のジャパンC
最後の直線は横に広がっての攻防が繰り広げられた。最内はタマモベストプレイ、2頭目エピファネイア、3頭目ジェンティルドンナと続いて、不利があって大外へ出したハープスターが10頭目かそれぐらいの位置。2着のジャスタウェイは7頭目ぐらい、3着のスピルバーグは4頭目ぐらいだ。
そして、上がり3Fタイムだが、もし内ばかり伸びる馬場なら、当然、ハープスタージャスタウェイの上がりタイムは遅いはずだが、現実は最速上がりがスピルバーグの34.8で、上位8頭のうち最も遅かったジェンティルドンナでも35.5。ほとんど差がない。通った位置には関係なく、「どこの位置も伸びる馬場」だったといえる。
どこの位置にいても伸びるから、そりゃ内を通ってきた馬は距離ロスが少ない分、バテないに決まっている。内を通って前にいた馬がバテないから、当然、前残りのレースになる。
それをつまらないというのなら、それは仕方ない。個人の感じ方だろう。
だが、この「どこの位置も伸びる馬場」を作るように仕向けたのは誰か?
メディアやそれに流されたファンの声も大きな要因の一つだろう。
昔からレース中の故障を少なくせよという声は多かった。そりゃ、馬券を買っているファンや予想を売り物にしているメディアからしたら想定外のアクシデントは少ない方がいい。故障を少なく、というのは乗っている騎手も、使う厩舎や馬主も同じ思いだろう。だから、JRAが馬場改良に取り組んできた。
最近競馬を始めた人たちには信じられないだろうが、20年ぐらい前のコースの使い方は、開幕週からCコース、開催が進むとBコース、Aコースとだんだん仮柵が内に移動していった。そして、そのたびにラチ沿いにグリーンベルトが出現し、前残り天国が続出していた(だから昔の方が内枠の成績がいい)。
それでは前残りになってつまらんというから、今度は仮柵の移動を反対にした。最初がAコースでB、Cというように。これが現在の形だ。その結果、どうなったかというと、全面がいい状態である開幕週を除くと、だいたいがインの方は荒れていて、外はきれいという状態がずっと続く。
この仮柵の移動は、それぞれ哲学が異なる。
外から内に移動させていた時の考えは、おそらく、最も多くの馬が走るインの方をいい状態に保ち、できるだけ故障の起きる確率を低くしようという発想だと思う。
内から外への移動というのは、インばかりいいのは不公平だという声への対応だろう。これを唱えていたのが、メディアやファンだ。だから、仮柵の移動方法を変えたのはメディアやファンの声が大きな要因だと思うのだ。
ところが、仮柵を内から外へ移動させると、だいたい、常に内側が荒れている状態なので、故障の確率が高くなってしまう。それは馬主、厩舎、騎手からしたら困る。故障したら馬主は損するし、騎手は危険にさらされる。
そこで、メディアやファンの「仮柵を外から内ではなく、内から外にしろ」という勝手な野次(私はそう思います)と、関係者の「内が荒れるのを改善してくれ」というのを両方成り立たせたのが、今の馬場じゃないだろうか。
詳しいことは専門外なのでよくわからないが、エクイターフとかそういった新技術がここ数年取り入れられて、馬場の悪化を鈍化させているという。そうなると、内が荒れて故障が起きやすいということも回避できるし、そもそも、全体的に荒れにくいから内から外までフラットな馬場状態を維持することができる(これを立証したのがジャパンCの結果だろう)。
それでも、「インばかり残ってつまらん」というのなら、昔に戻しましょうか(冷笑)
インはボロボロに荒れて伸びないから外枠の馬も追込み馬も上位に来ますが、代償としてインを通った馬が故障しやすくなったり、みんなが馬場の半分より外を通るというイビツなレースが繰り広げられることになるでしょう。こっちの方がよほど不健全で不確実(故障したり、あまりに外を回らされすぎて紛れたり)だと思うんですけどね。
まあ、何にせよ、今の馬場を作った方たちは立派だと思う。JRAもあまりにも無責任な素人集団(私も含めて)の声はある程度無視して(とういか全面無視でもいいと思う)安全性や公平性の確保に努めてほしい。