どうやらドリーム競馬に釣られたらしい

 ドリーム競馬で世界に挑むホースマンと題してアメリカ・ケンタッキー州で馬産に取り組むウインチェスターファームの吉田直哉氏の特集が放送された。世界一の馬産地ケンタッキーで零からのスタート。スタッフと一丸になって働く吉田氏。開場3年目にして初の産駒を日本へ輸出した。エイシンヴァイデンなどである。牧場スタッフのコメントに次のようなものがあった。
「普通の牧場主はパーティーや会合で全然、顔を出さないのに吉田氏は必死で馬の面倒を見ている」
 まあこんな類のものだったが、吉田氏の人柄のバックボーンには一つの悲劇が含まれていた。
 吉田直哉氏の父・吉田重雄氏は早来で馬産を生業としていた老舗の牧場主の3代目だった。2代目に当たる吉田一太郎氏は早くから輸入馬による馬産に着目していた点において優れた見識の持ち主であったが、1頭の国産牝馬を預かることになった。クモワカ。この馬から全ては始まる。
 クモワカの仔ワカクモは桜花賞を勝ち故郷へ帰ってきて1頭の栗毛馬を産んだ。この馬は吉田牧場と交流の深かった小川佐助調教師の元に預けられ2歳夏に函館でデビュー勝ちを飾った。そこから3連勝で阪神3歳Sを勝ち、クラシックの主役となった。テンポイント日経新春杯開放骨折の重傷を負い43日間にわたる闘病生活の末にこの世を去った。この栗毛馬にまつわる話は様々なところで語り継がれてきたが、最も身近に接した厩務員、そして最後まであきらめなかった獣医、馬主、生産者たち。普段、スポットライトの当たらないところが綴られた一冊が「流星の貴公子 テンポイントの生涯 (集英社新書)」である。人と馬とのつながり。JRAのキャッチコピーじゃないが、「人が馬を愛するように、馬も人を愛する」 そんな吉田重雄氏の生き様はしっかりと直哉氏にも受け継がれている。

流星の貴公子 テンポイントの生涯 (集英社新書)

流星の貴公子 テンポイントの生涯 (集英社新書)

 何かタイミングが良すぎるなあと思ったら案の定、ドリーム競馬のサイトに…
  http://www.ktv.co.jp/sports/keiba/books/index.html
 厩務員の山田さんがつきっきりで介抱していたエピソードなど泣きそうになる。