ゲーテ「ウィルヘルム・マイステルの遍歴時代(上)」

ゲーテを読むたびに思うが、この人の知識というのはものすごい。
あらゆる方面に通じている。本当の天才というのか、努力家というのか。
それが作品にいかんなくちりばめられている。ゆえに読む方にもそういった知識や理解力が要求される。ので、たまに読んでいてわけがわからんようになる。
しかし、「あらゆる欠点は美徳となり、あらゆる美徳は欠点となる」。
それはゲーテの作品も例外ではなく、その性質ゆえに教養小説な要素が強すぎるのである。うまい具合にストーリーの展開などは構成されているものの、一貫したテーマであるとか、真に強調したいところ、そういったものがボヤけてしまう。
また、教養小説にありがちな「筋のつまらなさ」というのも目立ってしまう。どうもドイツの近代小説はそういうのが多くて、「堅苦しい」「つまらない」というイメージが強いが、天才肌の作家が持てるものを存分に書き込んだ結果でもある。