アナトール・フランス「神々は渇く」

人間は汚いよな。
汚いアナトールだなあ。
人間は神にはなれない。人間が人間を裁くのは限界がある。
かといってワシがものすごく信仰の篤い人間かというと全くの反対で、分からん。なぜ人はこんなにも宗教や偏屈な思想に執着し、人間性を変えられるのか。
しかし、それが真実なんやからしょうがない。
正義ってなんですか。法を遵守するってなんですか。
そんなものは世の為政者が勝手に決めたものであって、よいものもあれば悪いものもあるし、よいものであったとしても運用するもの次第で悪用されたりもする。
いや、悪い方に使われることの方が圧倒的に多いわけである。
人間は弱い。人間は汚い。
ワシは愚物に対して失望する、いや、失望というよりは期待通りか。ハナから望みなんか抱いていないわけであるから。
ワシは大衆に対してあきれる。彼らは何も考えちゃいない。ただ周りに流されているだけなのである。今も昔も。
自分だけは強くありたいと思う反面、やっぱり弱い自分に対していちばん失望する。
そして死にたくなる。
だけど死ねない。弱いから。
人間って汚いよな。
えぐいぐらいに描き出されていてなあ。