島崎藤村「春」

春 (新潮文庫)

春 (新潮文庫)

ようやく落ち着いてきた。
何とか読み通してみたものの、すっきりとはいかん。
何がって、結局、主人公は何にもしてない。ただ闇雲に手当たり次第働いては「自分の思っていたのとは違う」と辞めて終いには病んでしまう。解決策は「旅に出る」。なんちゅう無責任な話よと。何の解決にもなってないやん。そして、最後にはとってつけたように「キミを招きたがっているところがある」と元の鞘に納まっていく。振り出しに戻る。まあ、実際にそうやったということであればそうなんやろうが、周りに流されるまま生きているだけやないかと。そこが「人とのめぐり合い」であると言うのならばそうやろうが、じゃあ、そこまで悩みに悩んだ自分は一体何やったんよと。
前半部分はまどろっこしいし、事件が突然起きたことになっていて、起きた時にはすでに解決しているという伏線も何もない展開。読んでいて「あんた、今思いついたんちゃうん」と感じたりするんよ。そこからの心理の移り行きというのは面白いけど、他人の心は分からんまま放置されて、結局、何が理由で死んだのかも分からん。ものすごく中途半端というか。勝子はんが死んでからのあっさりとした展開もそれまでの重々しさから考えたら軽すぎるし、それで終わり?という気もする。
ただ、兄さんがタイーホされてからの苦しみというのが、前半の出来事を踏まえてのことというのが大きい。前半部分があるから、この後半が生きてくる。死んだ人と死ねなかった人。この差というのが大きい。最終的に運任せみたいなところではあるけれども、死ねない人には死ねない理由がある(それは単に弱いとかいうのもあるが)。
全体としてみたら、ものすごくまとまりの悪い作品と思うけど、端々を取り出してみると面白いとは思う。(要するに構成力がなあ、ということ)
構成もくそもない駄文書き散らしているヤカラが言うな? そんなもん、お前…