谷崎潤一郎「卍」

卍(まんじ) (新潮文庫)

卍(まんじ) (新潮文庫)

ここ1ヶ月で3冊目の谷崎ですな。
が、ここ1ヶ月でいちばん身体に合わん谷崎ですな。
全文が大阪のおばちゃんおネーちゃんがしゃべっとる。よって全部大阪弁。これ自体はなんも抵抗ない。むしろワシが実験しとることとおんなじで、まあ、どんだけ方言で通用するねんと。これ、必ずしも大阪弁で書かなアカンという話ではないと思うけど、これを標準語にして書いていたらゾッとするもんができてるやろうね。駄々こねるのに大阪弁やからかわいらしう感じるけど、標準語でやったらどぎついでぇ。
さて、内容が、合わん。何もRezが嫌いとかそういうのはアッー!ないけど、一言でいうと「えぐい」。インテリやくざ(のへたれ)みたいな綿貫のやり口もえげつないが、それを何かと操っている光子の魔性もえぐい。いや、これが一番えぐい。しかし、これが真実なんやろうか。とうてい色事とは無縁そうなお父ちゃんが、最後に一番魅入られてしまうんやからなあ。
合わん、というのは、ワシ、こういうパッションというのか、全てを忘れてというのんに遭遇したことないから、実は羨ましいだけなんかもしれん。死にたくはないが。
おんなじうまくいってない夫婦モンでも、「蓼喰う虫」のほうが好きですわな。というワシは淡白なんかしらん。